学生の頃に、約1ヶ月かけて中国〜チベットを旅した。この作品は、そこで出会った一匹の鶏がモチーフになっている。
ある日、昼食をとった食堂の裏で小さな檻を見つけた。その中には、食用となる鶏や兎が数匹飼われていた。一生懸命餌をついばむ健気な姿は、今を懸命に生きる命の力強さに満ちあふれ、その眼は輝いていた。その姿を見ていた時、私の心に“輪廻”という言葉が浮かんだ。あらゆる生命は生死を繰り返し、一つに繋がりあっているという思想である。鶏も私も、同じ命で繋がっている事を認識した瞬間、その堂々と生きる鶏に、私は畏敬の念を抱かずにはいられなかった。この心を教えてくれた鶏への感謝の気持ちを、偶像として表現した。
カイローンとは、“大人の鶏”という意味である。(タイ属ルアンテン村では、生活を支えてくれる鶏を崇拝する文化があり、その成長段階に応じて、尊敬の念を込めた様々な呼び名を付けている。カイローンとは、その呼び名の一つ)